我が子のシグサを把握しておこう


赤ん坊のシグサを知ることにより、

撮影現場で大いに役に立ったエピソードは数多くあります。

 

その一つを紹介しましょう。テレビで、ある時代劇の撮影でした。

眠っている赤ん坊をじっと見る主人公、

すやすやと寝息を立てて眠る子供との別れのシーンでした。

 

止む無く我が子を捨て、一人小屋を出ていく感動的なシーンの撮影でしたが、

肝心の赤ん坊が,きげんが良くてなかなか眠ってくれないのです。

 

このシーンは重要なシーンで、見る人の涙を誘うシーンなのです。

泣いてこの場を去るシーンに、赤ちゃんがニコニコ手足をバタバタでは絵になりません。

 

スタッフ一同眠ってくれることを祈っていました。

監督、スタッフ一同、先ほどから静かに、

物音ひとつ立てず静かに赤ん坊が眠るのをひたすら待っています。

 

傍から見ると大の大人40~50人が、

赤ん坊の眠りを待つため、咳一つせず待っている光景は

失礼ながら滑稽なものです。

 

1時間近くもこのような状態が続き、

たまりかねた監督が控室に待機している

お母さんを呼んで来いと、助監督に命じました。

 

お母さんは事情を聴き、すぐに連絡してもらえばよかったに、とスタッフに言いました。

小さな布団の中で、手足をバタバタさせてニコニコしながら暴れ ている

赤ちゃんに顔を見せないまま、お母さんが手をパンとたたくと、

今まではしゃいでいた赤ん坊が一瞬で、目をつむり、直ぐに眠ってしまいました。

 

監督初め、スタッフ一同口をあんぐり、不思議なものを見るように、

お母さんと赤ん坊を見比べていました。

 

これは日ごろの赤ん坊のシグサを把握していたお母さんのお手柄でした。

赤ん坊を見えないところで手をぱちんと鳴らすと、

条件反射で目をつむり、そのまま寝てしまうということです。

 

これを学術的に言いますと、聴覚の「瞬目反射」と言うそうです。

赤ん坊は聞こえているかどうかは自分で意思表示できないので、

一般に行われています聴力検査ができません。

 

そこでこの「瞬目反射」が、聴力検査に利用されているのです。

お母さんは日頃から自分の子供とのコミュニケーションで、

そのことを繰り返し行っていました。

 

それがとっさの時に役に立ったのです。

それを見た監督や現場の驚きは一様ではありませんでした。

その出来事以来、監督の撮影に赤ちゃんシーンが出て来るときは、

ベビーアドバイザー(そんな職種があったかどうか知りません)として、

呼ばれるようになりました。


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